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みなさん、こんにちは。腑侶鍛漢方医学研究所の所長兼薬剤師のプロたんでございます。寒いですね!もっともこの原稿を再度記述しなおししたのが正月10日頃ですので、今日はなんとも小春びよりなのかも??
カスタマーの橋本くんがいつアップしてくれるのか楽しみです。
最近、誤字脱字が多く、いつも彼女から訂正依頼がアシスタントの昇くんにきており、アップが遅くなりました。
小生が最近留守している間、いろいろと「店長メール」を賜わり、その中でのご質問に「証」に関するご質問。感謝申し上げます。
又は「甘草(かんぞう)」を中心とした「副作用」についてのお問合せ、そして「お血」(おけつ)についてのご説明など多岐に渡ってのメールご質問が多く、より専門的かつ薬学的な内容のお問合せも増えてまいりました。勉強家の皆様にとても驚いております。
漢方を学び、その体系を習熟することは一朝一夕にはいかぬ奥深さがございます。
少しでも疑問に思われたこと。漢方を服用する上で、特に注意を要すること。などなど、スタッフらが収集し、最終小生なりに以下、まとめさせて頂きました。
所詮、小生もまだ漢方修行中ではございますが、「一人のユーザー」としての立場として率直に書かせて頂きました。
「漢方の鉄人」を目指す皆様にとられまして、少しでもご参考頂ければ幸甚でございます。
2008年1月10日 |
腑侶鍛漢方医学研究所  |
| お時間ありましたら、ぜひこちらもお読みください「漢方薬の副作用」≫ |
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現在、病院界(つまり医家向けとして)で、医療用漢方製剤が使用されていることは、皆さんもご存知のことと思います。過去に処方せんを街の薬局さんで調剤して頂いたこともあるかも知れません。
アルミ分包に入っている例のサラサラした顆粒タイプ(最近は錠剤も人気あります)の「医療用エキス顆粒剤」です。
たいていは、大きい文字の処方番号が包装面に印刷されていますね。

これら健康保険適応の漢方製剤はエキス含有量も多く、とても優秀な製剤です。これが医師管轄の診断の上で、必要とあらば処方され、自己負担は、さほど多くなく(保険の種別、技術料にもよりますが)事実上入手できるわけですから、とても素晴らしいことです。
その昔、医療機関にまだ漢方製剤が普及されていない時代に、「医療用漢方製剤」を処方して頂けないか?と、相談を患者の立場でもちかけると、正直言って医師らからは、あまり積極的な回答が得られない時がございました。

西洋医学をご専攻されているドクターですので、むりからぬ話ですが、「そんなの効かない・・・。」というご意見も伺いました。
実は小生も、病院へ勤務ホヤホヤの時代には、陰で「永○園のフリカケの方がまだマシ。」なんてひどい悪口を言っていたこともあります。
いまでこそ、赤面汗顔の至りでございます。
あれから三十数年を経て、「医療用漢方製剤」はごく普通に処方されるようになりました。
医薬分業の普及も手伝い、各大学病院にも「東洋医学外来」が併設され、積極的に漢方を治療の中に取り入れる風潮も次第に浸透して参りました。
病診薬を要(かなめ)とする、いわゆる「調剤専門薬局」の薬剤師らもここへきて、自家製剤(漢方の薬局製剤)の研修や漢方処方をあらためて勉強しようとする動きもあるとの話も耳にしている昨今です。
このような背景の中で、医療機関における漢方の採用頻度が高まり、なぜか高薬価の「小柴胡湯(しょうさいことう)」が繁用され、そしてついに皆様方もご記憶にあるかと思いますが、「重篤な副作用情報」として、マスコミを騒がす事態となりました。

小生は「小柴胡湯(しょうさいことう)」は素晴らしく優秀な処方と思いますが、あの報道を契機にユーザーからは「漢方は怖い」、「飲むと副作用が必ずでる・・・」と、又は医療機関からは「査定される?」から「つかえない」と敬遠されてしまったことは、実に残念でなりません。
1997年。医療用漢方製剤のより一層の適正使用を図ることを目的として、我々医療機関への一つの警鐘として、「一般的注意」なるものが、「日本漢方生薬製剤協会」による申し合せ事項が提出されましたので、以下、列記いたします。
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1.一般的注意
本剤の使用にあたっては、患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること。なお、経過を十分に観察し、症状・所見の改善が認められない場合には、継続投与をさけること。
・・・・つまり、ただ漫然と使用するのではなく、必ず漢方と言えどもきめ細かな経過観察に留意するという解釈だと思います。
2.漢方製剤の適正使用について
(薬務公報 平成9年8月21日)
漢方製剤の副作用に関しては、使い方(いわゆる証)の誤りで生じるものと、そのものの薬理学的作用に基づくものに分けられる。
したがって、漢方製剤の副作用を減じるためには「証」を理解し、「証」に従った処方をすることが大切である。
今般、漢方製剤の使用上の注意に「患者の証を考慮し投与する」旨の記載を行った。
・・・・・と、記載されております。漢方製剤の導入には、ここであらたに「証(しょう)」の確認がほぼ必須(文面から判断するに)であるとの意味合いがくみとれます。
従来からの漢方専門家からすれば、ごく当たり前の話かもしれませんが、「証判定」による導入は、これから漢方製剤を採用する病院医師らにとってのある意味「問題提起」でもあり、漢方処方せん記載前の登竜門として位置づけられたと言っても過言ではないでしょう。
「証判定」につきましては、その詳細、鑑別方法、手法において各大家、専門家によりご意見が分かれているのが現状のようで、さらに「証は問わない。」という「反随証論」も実際に存在いたします。
これについての是非はともかくとして、今後の医療機関における漢方製剤使用については、さらなる慎重投薬が義務づけられたということと解釈しております。

次に、この「証(しょう)」について考えてみましょう。
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引き続き、漢方製剤の適正使用について(薬務公報)、以下りの通り「証(しょう)」の説明がなされております。
(1) 証について
証の定義は、「患者が現時点で呈している病状を陰陽・虚実,気血水,五臓など漢方医学のカテゴリーで総合的にとらえた診断であり、治療の指示」である。
ここで「現時点で」という理由は、漢方医学においては疾病は流動的なものと理解しており時々刻々変化するものと認識しているからである。つまり、「証」は固定したものではない。
証を特徴づけるもう一つの事柄は、患者の呈する個々の症状を個別に理解するのではなく、「陰陽」や「虚実」というような概括的なカテゴリーを当てはめることである。
・・・・・との、「証(しょう)」についての説明がなされております。西洋医学と画する、診断の「めやす」つまり「ものさし」が全く違う認識である旨が強調されているように伺えます。大体、はじめて漢方理論に出会った方は早くもここで「めげて」しまうようです。
「何のことかワカランなぁ・・・・」と。
例えば、検査数値が○○だから、こうとか、この薬剤が適正使用であるから指針とするということではなくて、あくまでも患者の流動的な体質変化を「見極め」ながら、「陰陽」や「虚実」をあてはめていくという、経験方と熟練を要する判定であるということでしょうか。
漢方診断は奥深く、考え方によっては「限りなく主観」が混入する恐れもあり、的確な「診立て」はそれ相当の研鑽を要することでしょう。
・・・さらに、「陰陽・虚実」カテゴリーについては、以下のように概説されています。
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このカテゴリーについて以下に概説する。
(2) 陰陽・虚実の認識による証の決定
「陽」
闘病反応の様式が総じて熱性で発揚性のものを陽の病態という。
この病態では発熱や自覚的な熱感があり、顔面紅潮や口渇がある。
「陰」
これに対して、生体反応が寒性で沈降性のものを陰の病態という。
悪寒がみられ、また、耐寒能が低下し、顔面の蒼白、四肢末梢の冷えなどを呈するものである。
流動・転変する病態を陰陽のカテゴリーで認識するものとして、六病位の概念がある。

六病位の概括
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病位 |
主要症状 |
部位と性質 |
| 陽証 |
太陽病期 |
悪寒・発熱、頭痛、項背部のこわばり、疼痛、関節痛、脈浮 |
表の熱証(真熱表仮寒※) |
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少陽病期 |
悪心、嘔吐、食欲不振、胸内苦悶、胸脇苦満足、弛張熱、脈眩 |
半表半裏の熱証 |
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陽明病期 |
腹満、便秘、口渇、身体深部の熱感、稽留熱、脈実 |
裏の熱証 |
| 陰証 |
太陰病期 |
腹満、心舌痞硬、腹痛、食欲不振、下痢、腹の冷え、脈弱 |
半表半裏及び裏の寒証 |
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少陰病期 |
全身倦怠、手足の冷え、背部悪寒、胸内苦悶、下痢、脈沈細弱 |
裏の寒証に表、半表半裏の寒証が加わる |
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厥陰病期 |
口内乾燥、胸内苦悶、下痢(不消化)、全身の冷え、ときに顔面などの熱感 |
裏の極度の寒証(ときに真寒表仮熱※) |
※真熱表仮寒:本質的に熱証であるのに表の表層のみに偽寒証を呈するもの
※真寒表仮熱:本質的に寒証であるのに表の表層のみに偽熱証を呈するもの |
さて・・・・・「陰」・「陽」の概説はなんとなくわかったが・・・この「六病位」って何だぁ?!・・・・てなことになりがちです。
この表を1回見ただけで、理解できる方はまさに天才・・とまではいかなくとも、感覚的に相当優れている方でしょうね。
小生は最初、10回読み直したものですが、全く理解に苦しみました。
大体、厥陰病期(けっちんびょう)の状態を現代医療にあてはめてみると(そもそも、それがいけないと判っていてもそうしちゃう・・。)この状態で、この病態で、「漢方でもボチボチはじめるとすっか・・・。」なんて考えていたら普通は命の保証はありません。
つまり、救急で飛び込んで、即点滴かも知れません。
半表半裏の熱証の熱証って何だ?ワケわかんねえ・・・・・という事になって、はい漢方理論はここで終わりということになってしまう。
でも、逆によく考えてください。今から数千年も前には、救命救急どころか119番する電話もなかったのです。くどいようですが、ER緊急救命室に入ればJ.クルーニー扮する素敵なドクターもこの時代にはいなかったのです。
庶民が病気で苦しみ、先祖伝来から言い伝えられた「知恵療法」と、さらに天から授かった「天然物」(生薬、鉱物等)を用いた処方。気の遠くなるような年月と犠牲を費やした「人体実験」。健康は自らの手で守るというポリシーと安全性を以って編纂された「漢方医学理論」。
「気・血・水」、「六病位」をはじめとするさまざまな理論の集大成がそこにあります。
そのように考えると実に感動的ですね。ぜひ、くじけずに勉強してみましょう。
次ぎはさらに、それぞれのステージの説明に入ります。

陽の病態を三つのステージに分類すると、太陽病期,少陽病期,陽明病期になる。
太陽病期は急性感染症の初発の時期にあらわれるもので、橈骨動脈が浮き上がり、頻脈を呈し、悪寒と発熱、頭痛などを示す。
これら一群の症候をまとめて,太陽病期と認識する。
太陽病期に相当し、自然発汗がなく、橈骨動脈が充実し、後頭部、後頚部にこわばりを認めた場合、これを一括して「葛根湯の証」という。
一方、同じく太陽病期に相当しても自然発汗の傾向があり橈骨動脈の緊張に乏しいものは「桂枝湯の証」と認識される。
この二つの証の相違は虚実という用語で区別することもできる。
葛根湯の証は太陽病期の実証であり、他方、桂枝湯の証は太陽病期の虚証である。
生体反応が充実しているか虚弱であるかによって症状を把握するわけであり、太陽病期においては、橈骨動脈の緊張度がこの虚実判定の有力な情報となる。
なかなか、わかりやすい説明であると思いました。
葛根湯⇒ 太陽病期 実証
桂枝湯⇒ 太陽病期 虚証
余談ではありますが、「かぜを引いたかな?」という風邪の初期症状に、何でもかんでも「葛根湯」(かっこんとう)という風潮がまかり通っているようですが、これは誤りで、「証(しょう)」が合わなければ、あまり効かない処方となってしまいます。
逆に、「証(しょう)」がぴったり合えば、それこそ劇的に効くというのも漢方の特徴かも知れませんね。
次に少陽病期にいってみましょう・・・・・。つまり第2ステージです。
陽の病態の第2ステージを少陽病期という。
急性感染症においては症状発現後の5〜6日を経過したものがこのステージに移行するものが多い。
午前中は平熱で夕方になると微熱が出、食欲不振,口の苦みなどを呈する。
また、多くの慢性疾患は,このステージにとどまる。
この際、微熱傾向、食欲不振、白〜黄色の舌苔を呈し、冷えや耐寒能の低下は伴わない。
このステージにおける虚実の判定は腹壁トーヌスと橈骨動脈の緊張度によってなされる。
胸脇苦満(きょうきょうくまん)は左右の肋骨弓下部に筋性防御が出現し、この部を圧迫すると不快感を自覚するという症候である。
この胸脇苦満を呈し、少陽病期のステージにある場合には柴胡を主剤とする一群の漢方薬の証としてよい。
胸脇苦満の程度と虚実によって証が確定する。
すなわち胸脇苦満が中程度にみられ、腹壁のトーヌス、橈骨動脈の緊張も共に中程度であれば「小柴胡湯の証」である。
これよりも腹壁のトーヌスが充実し、脈の緊張もよく、便秘傾向がある場合には「大柴胡湯の証」である。
他方、腹壁のトーヌスが弱く、橈骨動脈の緊張に乏しく、更に胸脇苦満の程度もわずかである場合には「柴胡桂枝乾姜湯の証」と判定される。
更に詳細な点については成書に譲るが、第一ステップとして、太陽病期、気血水の異常など基本病態を認識する。
第2ステップとして虚実の概念や特異的な症状をとらえて証を決定する。

さあ、少々難しかったですか?
ついにでました、「小柴胡湯(しょうさいことう)」をはじめとする各種柴胡剤(さいこざい)の用い方。
ここで、この処方を用いる時の大きな特徴「胸脇苦満」(きょうきょうくまん)についてご説明してみましょう。
「胸脇苦満」とは、左右の肋骨弓下に現れる筋性防御と圧痛をさします。腹直筋の肋骨弓付着部の筋緊張が増強し、手指3指を揃えて肋骨下面に向けて圧迫してみると胸の中に突き上げるような不快感や痛みを訴えることをさすのです。
小柴胡湯(しょうさいことう)、大柴胡湯(だいさいことう)など柴胡(さいこ)を主剤とする漢方製剤を用いる場合の重要な症候とも言えます。覚えておきましょう。
ついでに、漢方の世界での繁出用語に「お血」(おけつ)という言葉があります。よくメールでもご質問をお受けしますので、この機会に簡単にご説明いたしましょう。
「お血症候群」とは、血液の流通が滞ったために起こると古来考えられている症候群です。他覚的には舌や歯肉などの可視粘膜の色調が青紫色を呈し、皮膚の毛細血管拡張、胸脇苦満、臍(へそ)周囲の圧痛などを示します。
また自覚的には精神不穏、易怒性、易疲労、顔面の充血感、腰痛、肩こりなどを示します。痔(じ)も一種の「お血」と考えられることもあり、駆お血剤、例えば桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)等で長年苦しんでいた痔(じ)が軽快することがございます。
また、よくご店頭で相談をお受けする月経前緊張症は漢方医学的にはお血症候群であると言われております。
また合併症の視点から診断する時、膠原病、糖尿病・悪性腫瘍、動脈硬化性疾患、いわゆる自律神経失調症などには本症候群が高率に合併しているケースがあるのです。
従って、「お血」(おけつ)介在の有無は漢方診断のめやすとしては、かなりの重要事項で、「水毒」(すいどく)と並び、処方決定のポイントとなり得るファクターとも言えましょう。
話は横道にそれましたが、次に「証(しょう)に合った漢方治療」と題して、喚起を促している文に入りたいと思います。
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(3) 証に従った漢方治療
先に述べたように、証は固定したものではなく、変化する。
その変化に応じて逐次修正をするのが証に従った漢方治療である。
「証」の診断が適切であったか否かは漢方製剤を投与してその応答によって判断する。
方剤の方格と証とは、“key and lock”の関係にあり、各々の漢方方剤の持つ作用スペクトルとその病態スペクトル(方格)を医師の側に集積しておく必要がある。

図(駆お血剤の陰陽論的位置づけとその作用スペクトル)
図の原点が生体にゆがみのない状態であり、病態によってゆがんだ状態を原点に戻すのが、方剤に基づいた漢方の治療といえる。
例えば、当帰芍薬散と桃核承気湯はいずれも更年期障害の適応を持つが、証が異なり、その方格は全く逆である。
更年期障害の患者で当帰芍薬散の適応病態にある症例に誤って桃核承気湯を投与すると、生体は更に陰性で虚性の方向に向かって偏位してしまい、下痢、冷え、倦怠感などが引き起こされる。
逆に桃核承気湯が用いられるべき症例に当帰芍薬散を投与すると、身体の熱感、のぼせ感、倦怠感などがあらわれ、疾病は治療しない。
図を用いた説明ですので、おわかり頂いたと思います。
方角違いの処方を選択してしまうと、副作用というよりも、反作用というかむしろ症状は悪化してしまうから、証(しょう)の判定にはくれぐれも留意して頂きたい旨が網羅されております。
つまり方剤の適正使用に関しては、当初の「証(しょう)」の見極め、さらに変化をしていく「証(しょう)」の経過観察にかかっているという内容説明です。
さて次に、医療機関で処方される漢方製剤と従来から処方されている抗生物質や消炎剤との「併用」について述べた文書がありますので、抜粋してみました。この件についてのご質問は以前からかなり多かったかと存じます。
ぜひご参照ください。
4.漢方製剤と他の消炎薬,抗生物質等との併用
一般的に漢方製剤と他の医薬品との併用によって効果が相殺されることはなく、むしろ患者にとって好ましい結果が得られることが多い。
遷延化した感染症では抗生物質や殺菌薬とともに生体の治療機転を高める漢方製剤を併用するとよい。
また慢性関節リウマチなどでは漢方製剤を主にし、適宜に抗炎症薬の坐薬などを用いると消化器系への負担を軽減できる。
また高血圧症においても、降圧薬と漢方製剤の併用により自覚的にも他覚的にも好ましい結果が得られることが少なくない。
副作用の項に掲げる一般的な注意を考慮しつつ併用を行うとよい。
・・・・・ということで、まずは「併用」しても特に大きな問題はないだろうということです。
また、かえって「併用効果」により症状が好転することもあるとのくだりで留めております。
さて、最後に気になる「漢方の副作用」の件について、ご注意を含めての通達文書に入りたいと思います。
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薬剤性間質性肺炎
(1) 漢方製剤による薬剤性間質性肺炎:慢性肝炎の治療において、インターフェロンと小柴胡湯の併用は薬剤性間質性肺炎の発生頻度を高める危険性があり、併用は禁忌とされている。
さらに1996年3月に、小柴胡湯の関与が疑われる間質性肺炎の死亡例の発生があったとの警告が厚生省から発せられた。
漢方製剤の多くのものはBRM(生体反応調整薬)としての側面を有しているので、稀ではあるが、様々な漢方製剤でこの様な副作用が発現する可能性がある。
小柴胡湯の他に乙字湯、大柴胡湯、柴胡桂枝乾姜湯、半夏瀉心湯、清肺湯、柴朴湯、辛夷清肺湯、柴苓湯、黄連解毒湯での間質性肺炎の発症が報告されている。
発熱、乾燥性咳嗽、呼吸困難などその初期の病像を見逃さないことが重要である。
間質性肺炎が疑われたならば、直ちに服薬を中止させ、胸部レントゲン撮影、血液ガス分析を行い、早期に適切な治療を行わなければならない。
慢性肝炎に小柴胡湯を投与する際のガイドラインが和漢医薬学会により提出された(2000年)。
これによると、小柴胡湯を投与する前に胸部レントゲン撮影を行い、肺の間質性病変が疑われる場合には原則として本剤を投与しないこととされている。
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乳糖不耐症に基づくもの
(2) 乳糖不耐症に基づくもの:漢方エキス製剤は生薬の水抽出エキスを乾燥させ、これに賦形剤として乳糖あるいはトウモロコシ・デンプンを加えて製剤化したものである。
従って乳糖不耐症を体質として有する患者ではこのための腹部膨満感、下痢などを来たすことがある。
乳製品でこのような症状を経験したことがないかを問診することが必要である。
甘草配合方剤における偽アルドステロン症
(3) 甘草配合方剤における偽アルドステロン症:構成生薬として甘草を配合する漢方方剤は多い。
この種の方剤の連用によって低カリウム血症、浮腫、血圧上昇などの偽アルドステロン症を呈する場合がある。
われわれの経験では服薬開始後2〜3週間で偽アルドステロン症が現れることが最も多い。
従って漢方製剤の使用開始に当たっては,あらかじめ体重、血圧、血清電解質を測定し、浮腫の有無をチェックし、少なくとも2週後、4週後に経過を観察すべきである。
血清カリウム値の低下を看過したためにミオパチーを生じたという報告があるので特に注意を要する点である。
偽アルドステロン症が生じた場合には服薬を中止させ、臨床症状、血圧、血清カリウム値を追跡する。
一般的には服薬中止後は特別の処置をしないでも異常は改善するが、重篤な場合にはカリウムの補給、一時的な降圧薬の投与等を要する。
軽度の血清カリウム値の低下(3.2mEq/L前後)に留まり、しかも漢方製剤が明らかに有効性を発揮している場合には経口カリウム薬を併用し、経過を観察するとよい。
麻黄配合方剤における血圧上昇
(4) 麻黄配合方剤における血圧上昇:麻黄の主成分はエフェドリンであり、交感神経β受容体刺激作用がある。
従って高血圧症患者に投与する場合は少量から開始して漸増しつつ経過を観察すべきである。
キサンチン誘導体製剤と併用する場合も相互に増強することが考えられるので用量に注意すべきである。
他剤との併用による副作用の増強
(5) 他剤との併用による副作用の増強:グリチルリチン製剤(強力ミノファーゲンC,グリチロン)と、甘草配合の漢方方剤の併用により偽アルドステロン症が出現することがある。
グリチルリチンは甘草の主成分である。
フロセミド、エタクリン酸、チアジド系利尿薬は血清カリウム値を低下させる作用を有するが、これらの薬剤と甘草を配合する漢方製剤とを併用する際にも偽アルドステロン症、とくに血清カリウム値の低下に注意する。
その他の副作用
(6) その他の副作用:漢方製剤による副作用として発疹、発斑などの皮膚症状、胃腸障害が現れることがある。
胃腸障害は胃部不快感,食欲低下を主とするが、これは地黄、麻黄を配合する漢方製剤で時にみられる。
地黄配合の製剤としては四物湯、温清飲、十全大補湯などがある。
以上、大別され、わかりやすく説明していると思います。小生が補足するまでもないと存じます。
1.柴胡剤を中心とした薬剤性間質性肺炎
2.配合主成分ではなく、製剤時の賦形剤に由来する乳糖不耐症に基づくもの
3.甘草配合方剤における偽アルドステロン症、つまり低カリ
4.麻黄配合方剤における血圧上昇(麻黄湯、葛根湯、小青竜湯 など)
5.他剤との併用による副作用の増強として甘草類似成分
6.その他、発疹、発斑などの皮膚症状、胃腸障害など

以上が、副作用のまとめです。
どれをとっても重要事項ですが、実際に日常でよくあり得る「副作用」が、4.の麻黄配合方剤における血圧上昇です。
葛根湯は漢方処方の中でも特に著名な処方ですが、この有効成分の一つに「麻黄(まおう)」が含有されていることは、意外と知られていないようです。
かかりつけの病院で高血圧の治療を受けている患者さんが、「肩こり」ひどく、「証(しょう)」が合い、適方だからと言って、街の薬局で購入した「葛根湯(かっこんとう)」を何年も服用し続けていたという決して笑えない話も実際には日常存在するのです。
以上、これらを踏まえ、今後漢方療法をするにあたり、少しでも皆様の「プラス」になればと思い、記述させて頂きました。
本日は、漢方製剤、取扱い諸注意事項をまじえ、「証(しょう)」、「副作用」の話などをさせて頂きました。
なお、参考文献の引用に関しましては、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
皆様もお元気で頑張ってください。時節柄ご自愛ください。
プロたん管理薬剤師
2005.12.03.プロたん拙稿
2008.01.25.目倶転載

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初回2005年12月収録
〈参考文献〉
1)寺澤捷年先生:症例から学ぶ和漢診療学,医学書院,東京(1990)
2)中村謙介先生他:漢方方意ノート,丸善・出版事業部,東京(1993)
3)矢数道明先生編:質疑応答 漢方Q&A,日本醫事新報社,東京(1991) |
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